里山日記

北摂の里山近くに住んでいます。里山をぶらぶら歩きながら撮った虫や鳥、花の写真を載せています。時には旅先で撮った写真も載せます。

2014年12月

先日から家の周りのシダを調べ始めたのですが、今日はヤブソテツ、チャセンシダ、カナワラビなどです。

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これまでこんなシダがあるとヤブソテツだと言っていましたが、どうやら事情が少し変わったようです。「写真でわかるシダ図鑑」(トンボ出版、2006)によると、これまで単にヤブソテツと呼ばれていた種は、実はテリハヤブソテツ Cyrtomium laetevirensで、ヤブソテツ C. fortunei var fortuneiとは別種ということになっているようです。

それではどうやって見分けるのかというと、「写真でわかるシダ図鑑」では、テリハヤブソテツの包膜径は1.1mmで、ヤブソテツの0.7-0.8mmに比べて明瞭に大きいこと、前者は暗緑色でツヤがあるが、後者は黄色っぽくツヤがないということぐらいしか書かれていません。また、テリハではないヤブソテツがどんな形のシダを指すのか、現状では「人によって違う」に近い不思議な状況にあるとのことです。この写真では2番めの写真ではツヤがありますが、一番上の写真ではほとんどありません。

そこで、少し調べてみました。まず、包膜径についてです。

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この写真から、縮こまっていない包膜を探してその直径を計測しました。その結果、平均は0.98mmになりました。やはり少し大き目のようです。

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ついでに包膜を拡大してみました。黒い線状の模様が入っています。周辺には毛のようなものは出てなくて、比較的滑らかです。

テリハヤブソテツとヤブソテツの違いをネットで探していたらこんな論文を見つけました。

C. S. Lee, K. Lee, and Y. Hwang, Korean J. Pl. Taxon. 43(3), 171-180 (2013) (pdf

韓国の方の論文ですが、韓国でも日本と同じ種類のヤブソテツが生えているようで、ヤブソテツ属の検索表が載っていました。英文だったので少し訳してみると、

1. 羽片は革質または厚い紙質で、羽片の先端に鋸歯はない
......2. 羽片の基部は丸い、包膜の中心部分は黒褐色・・・・・・・・・・・オニヤブソテツ
......2. 羽片の基部は楔状、包膜全体が黒褐色・・・・・・・・・・・・・・・ナガバヤブソテツ
1. 羽片は紙質、羽片の先端に細かい鋸歯がある
......3. 羽片は狭い披針形、先端に行くに従って徐々に狭くなり、光沢がある・・・・テリハヤブソテツ
......3. 羽片は卵状の披針形、先端に行くと急激に細くなり、光沢はない
...........4. 軸に沿った鱗片表面は黄緑色、約15対の羽片がある・・・ヤマヤブソテツ
...........4. 軸に沿った鱗片表面は濃緑色、約30対の羽片がある・・・・・・・ヤブソテツ

検索する上で注目する点は、羽片の先端の鋸歯、羽片の形、色や光沢になります。上から2番めの写真を見ると、羽片の先端に鋸歯があることが分かります。これでオニヤブなどを除けます。さらに、羽片が長い披針形で光沢があることでテリハヤブにたどり着きます。この表現はなかなか微妙ですが、上から2番目の写真を見ると確かに長い披針形で光沢がある感じです。一番上の写真では光沢はないのですが、形は長い披針形です。微妙ではありますが、おそらく両方ともテリハヤブソテツなのでしょう。

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次は民家の石垣にあったチャセンシダです。これにもイヌチャセンシダという似た種があります。違いは、チャセンシダは中軸の表側に2枚の翼があるのに対し、イヌは下側にもあって合計3枚あることです。そこで、実体顕微鏡で中軸を見てみました。

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さらに拡大してみます。

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軸上の両側に翼があります。下にはないようなので、チャセンシダで間違いないようです。

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ちょっと暗かったのでフラッシュをたいたらピカピカに光ってしまいました。先端の部分を頂羽片といいますが、それがややはっきりしているので、オオカナワラビかハカタシダかなと思いました。

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ソーラスは辺縁よりについているので、オオカナワラビかなと思いました。

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別に似た形のシダがあってこれもそうかなと思ったのですが、ソーラスは中央よりなので、こちらはハカタシダかもしれません。

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次は溝の脇にあったシダです。これにも似た種があって、羽片の脈を見ないと分からないようです。仕方なく、もう一度行って見てきました。

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このように隣どうしの脈が連結して網目状になっているのはイワガネソウ、これに対して連結していないのがイワガネゼンマイというようです。従って、イワガネソウのようです。(「写真でわかるシダ図鑑」によると、両者の雑種もあってイヌイワガネソウといわれているそうです。なんだかそれの葉脈と似ているような)

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最後は簡単なワラビです。

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これは拡大してみるとすぐに分かります。小羽片の先が長い変わった形をしています。

シダも22種目になって同定がかなり難しくなってきました。昔、家の周りを調べた時の記録を見ると70種ほどあったことになっているので、まだまだ先が長いのですが、少しずつやっていきます。

先日から家の周りのシダ調べを始めたのですが、だんだんやみつきになってきて、昨日も出かけてしまいました。でも、歩いていてシダの名前が少しずつ分かるようになったので、ちょっと面白くなってきました。

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まずはこのシダから。ベニシダの仲間です。もっとも普通にあるシダなのですが、以前は結構悩むシダでした。「写真でわかるシダ図鑑」(トンボ出版、2006)によると、ベニシダ類とイタチシダ類は初心者にとって「意地悪なほどの難敵」だそうです。イタチシダ類はちょっと分かりにくかったのですが、ベニシダに関してはこの本は大変わかり易く書かれていました。とりあえず、最下羽片下向き第一小羽片の大きさと形、それに胞子嚢群(ソーラス)を見ると区別がつきそうです。

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最下羽片下向き第一小羽片というのは上の写真で一対だけ小さくなっている小羽片です。これが第二小羽片よりはるかに小さいとベニ、マルバベニ、サイゴクベニ、ほぼ同じだと、オオベニ、トウゴク、遥かに大きいとイタチシダ類となります。さらに、小羽片の形が丸っこくなく、基部が両横に膨らんでいないと普通のベニシダということになります。この写真のシダはまさにそれで、ベニシダで良さそうです。ソーラスは小羽軸と縁の中間やや小羽軸よりという感じですね。

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次は民家の石垣などでよく見るノキシノブです。

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これのソーラスは葉の半分より先端部分にだけついていました。

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羽片が独特の形をしています。溝の向こう側にあったので手が届かなかったのですが、たぶんイブキシダではないかと思います。今度、もう少し詳しく調べてみます。

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これも石垣にあったまだ若いシダです。羽軸の周りに互い違いに翼がでています。この形からすぐにゲジゲジシダであることが分かります。

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先日歩いた雑木林の縁の道沿いにありました。初め、ワラビかなと思ったのですが、小羽片を見ると違いました。おそらくイワヒメワラビでしょうね。かなりたくさんあったので、これも今度調べてみます。

今日も5種になったので、この間からの種を合わせて17種になりました。少しずつ分かる種が出てきて嬉しいです。でも、まだ、カナワラビやらクサソテツなどの難関が残っています。もう少し頑張らなきゃ。

20年ぶりに始めたシダ調べでしたが、20年前と同じイタチシダで四苦八苦しています。

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イタチシダは最下羽片の第1小羽片(写真の矢印の部分)が第2小羽片より長いことが特徴です。さらに、上の写真の方は全体に長細い感じで、葉が少し裏に巻いているような感じがします。以前、こんなシダを見つけるとヤマイタチシダと呼んでいました。それに比べて、下の写真のシダは葉が先端に行くに従い、急に細くなるような感じで、葉にはツヤがあります。こんなシダはオオイタチシダと呼んでいました。

今回はもう少し詳しく調べてやろうと思って、採集してきました。でも、調べれば調べるほどだんだん分からなくなってしまいました。その原因の一つは、図鑑の説明で強調している点が図鑑ごとに異なり、また記述内容も少しずつ違うところがあることに気が付きました。そこで、まず手元にある4種の図鑑を比較してみました。

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図鑑の説明を全般的な説明、葉、鱗片、胞子嚢群の説明に分けて書いてみました。詳しいのは平凡社の図鑑ですが、赤字で書いてある部分の記述が他とは異なっています。いろいろと違うところはあるのですが、もっとも大きな違いは、葉柄基部の鱗片の色で、左の2冊は黒ないし褐色なのですが、平凡社のは淡褐色とまったく違います。いったい何を信じて良いのやら・・・。

でも、とりあえず、特徴が出ていると思われる部分に注目しながら調べてみました。

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これは小羽片を裏側から見た実体顕微鏡写真です。胞子嚢が綺麗に並んでいる様子がよく分かります。小羽片の縁が少し裏側に巻き込んでいますが(矢印の部分)、これがヤマイタチシダの一番の特徴だと私は思っていました。

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これは小羽片の中心をさらに拡大したものです。中心の軸上に丸いもの(矢印)がいくつか見られますが、これがおそらく袋状鱗片だと思います。

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これはシダの中心にある羽軸上の鱗片です。やはり根元に丸い袋がついたような鱗片がたくさんついています。これらのことからヤマイタチシダで間違いないなと思ったのですが、葉柄基部を見てちょっと悩んでしまいました。

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これは葉柄基部の鱗片の写真ですが、まずは黒いことに気が付きます。平凡社の図鑑では淡褐色だと書かれていたので、慌てて学研と保育社の図鑑を見てみたのですが、そちらは黒、黒褐色~褐色と書かれて、この写真と合っています。また、トンボ出版の図鑑については鱗片については何も書かれていません。さらに、この鱗片、よく見ると両側が薄い色になっている感じもします。そうなら、ヒメイタチかも。結局、よく分からないままなのですが、やはりヤマイタチだろうと思うしかないです。

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顕微鏡を覗いていたら、こんなアザミウマが顔を出しました。ちょこちょこと元気に動きまわっていました。

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次はもう一つのシダの方です。葉の淵はそれほど巻き込んでいません。

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また、裂片がはっきりしている部分でははっきりした鋸歯が見られます。

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羽軸の鱗片の根元はあまり袋状にはなっていないようです。

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最後の葉柄基部の鱗片ですが、やはり黒褐色です。よく見ると、縁が淡い色で縁取られている感じもします。とすれば、ヒメイタチかなと思ったり、先ほどのヤマイタチもこんな感じだったので、やはりこれはオオイタチかなと思ったり、まったくはっきりしませんね。シダ調べはいつもこんな終わり方をしてしまいます。

先日、本当に20年ぶりにシダを見にいったのですが、写真を撮っていたらだんだんと面白くなってきました。それで、昨日も家の周りのシダ探しです。いつもなら虫探しをしていた場所なのですが、探してみると、結構、いろいろなシダがありました。

家を出て川を渡ってすぐのところにちょっとした崖があって、これを登ると畑が広がり、更に進むと山道に至ります。いつも虫や鳥を写していた場所です。この小さな崖の道にシダがありました。

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はじめに気になったのはこのシダです。先端部分だけが黄色くなったり、枯れたりしています。記憶で間違いなければ、クマワラビですね。家に帰ってから図鑑を見るとやはりそのようで、「日本の野生植物 シダ」(平凡社、1992)には、「羽片は部分的なニ形を示し、・・・、胞子嚢群をつける羽片は葉身の先端部のものに限られ、やや縮んで、上部のものほど小さくなり、一面に胞子嚢群をつけ、胞子を散布したあと枯れる」とありました。

その部分を拡大してみます。

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色だけでなく、小羽片の形がぜんぜん違いますね。

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これは裏からの写真ですが、その部分にだけ胞子嚢がついていることが分かります。

名前が似た種にオクマワラビというのがあったなと思い出しました。ちょっと探してみました。

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おそらくこれがそれですね。

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裏から見てみました。ほぼ葉身の上半分にだけ胞子嚢がついています。その部分を拡大してみます。

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こんな感じでした。

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次はこのシダです。この間、オオバノイノモトソウがあったのですが、これはイノモトソウの方ではないかと思います。やはり葉の幅の広いものと、狭いものがあります。幅の広いものを写してみると、こんな感じです。

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葉軸にヒレがありますね。これが特徴です。細長い葉の方は胞子葉で、オオバノイノモトソウと同様に裏に胞子嚢が見えるはずです。(この写真のように、中軸の上から2段ほどまで翼のあるものをセフリイノモトソウというそうです。オオバノイノモトソウとイノモトソウの雑種のようです)

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縁が折れたような感じになっていて、この中に胞子があるのではないかと思います。

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これはよく見るシダでトラノオシダです。やはり葉の裏側を見てみます。

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胞子嚢が葉脈に沿うような形でついています。

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そして、カニクサです。これはつる性で、よく石垣などについているのを見かけます。これもシダです。

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カニクサにもこんな縮れたような葉のものがあります。これは胞子葉のようです。拡大して裏側から見てみます。

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葉の先端部分が胞子嚢なのですね。

まだまだあるのですが、今日はこのくらいでやめておきます。今日は5種類、先日も5種類だったので、合わせて10種になりました。ネットでシダを検索していたら、昔、パソコン通信のニフティ時代に活躍されていた方たちがまだ健在でした。ちょっと懐かしくなりました。私は虫に転向してしまったのですが、そのままずっと続けておられるようです。私も頑張らなくっちゃ。

最近は虫がまったくいなくなってしまい、おまけに鳥もいつもの常連ばかり。だんだん外に出かけるのが億劫になってきました。それで、ちょっと違ったものでも撮ってみようと思って、シダを撮り始めました。シダはもう20年ほど前に、ちょっと凝ってたことがあったのですが、もうすっかり忘れてしまっています。撮影しながら、少しずつ思い出してみようと思っています。

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家をちょっと出たところに松林があるのですが、その脇に群生していました。先端が尖っているので、ホシダで間違いないでしょうね。

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シダの見分け方は、胞子嚢、それに、鱗片でしたね。それで、ちょっと胞子嚢も撮ってみました。ホシダはこんな胞子嚢の配置で良かったかな。

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近くの雑木林の日陰はコシダでいっぱいです。これは間違いようがないですね。虫を探していた時には、こんなにコシダがあったとはまったく気が付きませんでした。

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その近くにはシシガシラもありました。

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雑木林の縁の土手のところの半日陰にはこんなシダもありました。名前はすっかり忘れてしまっていたのですが、家に戻ってから調べてみると、どうやらオオバノイノモトソウのようです。そういえば、そんなシダもあったなぁと思いだしました。

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先ほどのシダに混じってこんな細い葉っぱも見られました。てっきり別種だと思ったのですが、図鑑で調べてみると、どうやら胞子葉のようです。後でその裏側も撮影に行きました。

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これがその裏です。葉の縁が胞子嚢になっているのですね。

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次はこのシダです。これは雑木林の中の道沿いに一株だけありました。ちょっとなよなよとした感じのシダです。

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葉を拡大してみました。こんな感じです。

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さらに、裏側の胞子嚢も見てみました。葉脈の先端で、葉の周辺部に分布しています。葉軸は毛がいっぱいです。図鑑で調べてみると、どうやらフモトシダのようです。

結構、いろいろなシダがありますね。まだまだあったのですが、今日はここまでです。

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