松尾湿原は宝塚市の天然記念物に指定されている湿原です。面積はわずか261平米ほどの小さな湿原ですが、先日行ったときにはハッチョウトンボが飛び回り、虫や花の楽園のようでした。前回は虫を紹介したので、今回は湿原とその周辺の植物を紹介します。実は5月26日と28日の2回も行ったので、合わせて報告します。

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最初に湿原に行った時に不思議に思ったのはこの植物です。これは上から写したものですが、全体はこんな感じです。

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この写真は高さがまだ低い方ですが、高さ30cmほどになったものも湿原とその周辺にたくさん生えていました。根元にはユリ科のような葉が生えています。花のようでもあり、そうでもないようでもあり、写すだけ写して家で調べてみました。そうしたら、これはショウジョウバカマの花の後で、中心にある6つのものは種が弾けた後でした。山渓の「山に咲く花」や平凡社の「日本の野生植物」によると、ショウジョウバカマの花びらは花後も緑になって残り、蒴果が熟す頃には花茎が50-60cmにも伸びるそうです。花びらのように見えた周りの6枚が実は花びらそのものだったのですね。確かに雄しべも見えています。

「山に咲く花」にはさらに面白い話も載っていました。ショウジョウバカマは花が開く前に雌しべだけがつきだした雌性期という状態を経た後、花が咲いて雄しべが伸びた雄性期になるそうです。このように雌しべと雄しべの成育時期がずれるのを雌雄異熟といって、植物の世界ではよくある現象のようです。雌雄異熟させることで自家受粉を抑制させる仕組みになっているみたいです。実際には、ショウジョウバカマでは種からの発芽率はかなり低く、特に、低湿地においては葉の先端から芽がでるという栄養生殖の方が繁殖には有効のようです (S. Kawano et al., Plant Species Biology 22, 231 (2007))。

こんな面白い研究もありました。ショウジョウバカマの種子のDNAから自家受粉率を求めて、花の開花時期との関係を調べてみたという研究です。この結果、遅咲きほど自家受粉率が低下するという結果になりました。著者らは雌雄異熟のせいというより、花粉を媒介する昆虫が時期によりハエからハチに変わっていくことが関係していると考えています。というのは、ハエは花に滞在する時間が長いので、自家受粉率が高くなるからということのようです(S. Morinaga et al., Am. J. Bot. 90, 1153 (2003))。何だろうと思って調べ始めたのですが、いろいろと面白い話があるのですね。

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2回めに行った時にはボランティアの方が来られていて、いろいろと教えていただきました。湿地をよく見ると、モウセンゴケがいっぱいでした。それを見つけて喜んでいたら、花が一輪だけ咲いているというのでその場所も教えていただきました。

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ひょろっと伸びた花茎の先に白い花がついています。

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撮影はちょっと後ろ向けになってしまいましたが・・・。もう少し経つとあちこちで咲き始めるかもしれませんね。

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ササユリも2,3日後には咲き始めるそうです。

後は、松尾湿原のある宝塚自然の家の施設内で見つけた花です。

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ニワゼキショウはたくさん生えているのですが、やけに背の高い花が群がって生えていました。別種だなと思って調べてみると、「日本帰化植物写真図鑑」にはオオニワゼキショウという北米原産の帰化植物が載っていました。きっとこれでしょう。

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葉がショウジョウバカマのような、こんな草がいっぱい生えていました。皆、花芽を伸ばしています。初め、ショウジョウバカマかシライトソウかなと思ったのですが、たぶん、ノギランではないかと思います。もう少ししたら確かめに行きたいなと思っています。

後は植栽の花です。

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これは何かなと思って写しのですが、図鑑で調べてガンピかなと思いました。

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これはナツハゼかな。植栽の花は難しいですね。

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これはヤマボウシですね。

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今はどこに行ってもウツギが満開です。

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それにスイカズラですね。