里山日記

北摂の里山近くに住んでいます。里山をぶらぶら歩きながら撮った虫や鳥、花の写真を載せています。時には旅先で撮った写真も載せます。

2015年01月

先日、大阪市の鶴見緑地にある咲くやこの花館に行ったら、ウツボカズラにアリがついているのを見つけました。いろいろと調べてみると、このウツボカズラはネペンテス・ビカルカラタ Nepenthes bicalcarataというボルネオの泥炭地の沼に生える植物で、Camponotus schmitziというアリと共生しているというので最近話題になっていた植物だったのです。

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このウツボカズラは葉の先にこんな捕虫器をつけます。捕虫器の入り口のところには2つの突起が出ていて、そこから蜜を出しているようです。アリはそこに集まっていました。調べてみると、Camponotus schmitziというアリは4-5mmの大きさで、ここにいたアリはもっと小さかったので、ひょっとして別種のアリが共生しているのかもと思ってもう一度温室に行ってみました。

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今回は等倍撮影して、家に帰ってから大きさを測りました。大きさの測り方は、まず、このアリの体長をピクセル単位で測ります。私のカメラはNIKON D7100で、撮像素子の大きさが23.5x15.6mm^2。これが画素 6000x4000 pixel^2 に相当しています。従って、1 pixel あたりの大きさは 3.917μm/pixel になります。この値を先ほどのアリのピクセル単位で測った長さに掛ければよいのです。試しに手持ちでスケールを等倍で写して、ImageJというフリーソフトを用いて1cmをpixel単位で測ってみました。2度写したのですが、それぞれ2612.5pixel、2616.6pixelになりました。これから計算すると、1.023cm、1.025cmになりました。2-3% ほど大きめに出ましたが、今の目的には十分なようです。

このアリでも試してみると体長は322.9 pixelになったので、計算すると1.26mmになりました。やはりCamponotus schmitziの小型の働きアリ 4-5mm に比べるとはるかに小さいようです。Camponotus schmitziの場合は捕虫器のつるに穴を開けて巣を作っているのですが、このアリがもし共生しているとすると、同じように巣があるはずだと思って探してみました。でも、見つかりません。やはり違うのかなと思って、いろいろな花を見ていたら、アリが集まっている花を見つけました。

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この花です。これはクリナム・アメリカヌム Crinum americanumというヒガンバナ科の植物です。Crinumはハマオモト属のことです。この花を覗いてみると、

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こんな感じでアリがいっぱい集まっています。どうやら先ほどと同じアリのようです。もう少し拡大してみます。

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これも等倍で撮影して後から寸法を求めてみると、体長は1.15-1.42mmでした。腹部がほとんど透明で、黒い点がついています。でも、点の位置がまちまちなので模様というわけではなさそうです。この写真のアリを「日本産アリ類全種図鑑」の検索を使って調べてみると、ウスヒメキアリという種に似ていることが分かりました。

図鑑によると、ウスヒメキアリの体長は1.5-2mmで、分布は小笠原諸島、太平洋諸島、中国本土南部、西インド諸島、アフリカになっています。ひょっとして、植物か土について入ってきたのかもしれません。やはり、ウツボカズラに共生しているというわけではなかったようですね。

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モウセンゴケにも虫が捕まっていました。これはヨツマタモウセンゴケ Drosera binata というオーストラリアの植物です。Droseraはモウセンゴケ属です。虫を捕まえているところを拡大してみます。

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さらに拡大してみます。

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ハエの仲間でしょうか。こんな虫がくっついていました。

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これは別の虫です。残念ながら、種類までは分かりそうにないですね。

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最後はこのハエトリソウです。学名はDionaea muscipulaで、モウセンゴケ科に属しているようです。Dionaeaはハエトリグサ属です。温室のフラワーツァーでは、この中には棘があり、これに続けて2回触ると蓋が閉まるということでした。その棘を写してみました。

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確かに棘が生えています。でも、それに2回触ると蓋が閉まるなんて本当に面白いですね。

一昨日、あまり天気はよくなかったですが、昼前から大阪の箕面公園を歩いてみました。この日はさくら広場を通って山沿いを歩き、箕面滝まで到着したら、今度は左岸を歩いてきました。20年ほど前にシダを調べた時のノートが出てきて、ビロードシダ、キジノオシダなどの場所が地図に書いてあったので、それらを探すのが目的でした。途中から雨が降ってきて、傘をさしながら歩いたのですが、結局、見つかりませんでした。探し方が悪いのか、なくなってしまったのか・・・。

とりあえずその時撮影したシダを紹介します。

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最初はこのシダです。小羽片の間が開いているので、ひょっとしてコハシゴシダかなと思って撮影したのですが・・・。

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よく見ると小羽片が独立していないので、やはり普通のハシゴシダなのでしょうね。

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次はこれ。これはヒメカナワラビで間違いないでしょう。

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山沿いの道にたくさん生えていました。

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これはノコギリシダですね。ところが、近くにこんな葉のものもありました。

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葉の形はだいぶ違うのですが、ソーラスはノコギリシダとよく似ています。似た種にイヨクジャクがあるのですが、図鑑には中軸に翼ができるということです。これには翼はないので、やはり普通のノコギリシダでしょうね。

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次はこのシダです。一見、ノコギリシダに似ていますが・・・。

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ソーラスが全く違いますね。こちらはフモトシダです。

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次はイノデです。

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葉にツヤがあって、葉軸の基部の鱗片は幅広く、さらに、ソーラスはほぼ中間ということで、やはり普通のイノデでしょうね。

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これはカナワラビの仲間ですね。

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頂羽片がなく、全体の形からコバノカナワラビかと思います。

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最後はこのトウゲシバです。ホソバとヒロバの区別がつかないので、とりあえずホソバトウゲシバということにしておきます。

結局、新しい種は見つからなかったものの、少しずつシダにも慣れてきたようです。ヤブソテツの仲間もたくさんあったのですが、まだ違いが分からないので、この日はパスしました。

先日、大阪市鶴見区にある咲くやこの花館に行ってきました。その時はシダを見に行ったのですが、ちょうどフラワーツァーがあるというので初めて参加してみました。その時、ウツボカズラについても説明していただきました。

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ウツボカズラはよく知られた食虫植物で、葉の先端にこんな水入れのような入れ物(捕虫器)をつくり、その中に消化液を入れ、落ちてきた昆虫を消化してそこから栄養を得るという、つる植物です。この写真の種はNepenthes bicalcarataというボルネオの泥炭地の沼に生える植物です。このウツボカズラの捕虫器の上には写真のように2本の棘のような突起があり、そこから蜜を出して虫を集めているそうです。ちょうどその突起から落ちてくる虫を待つような格好ですね。ツアーでは、実際、小さな虫がいるでしょうという説明がありました。

この植物に関しては最近、いくつかの論文が出ています。それは、Camponotus schmitziという、この植物に特有のアリが生息して、ウツボカズラと共生関係にあるというのです。アリを共生させる植物をアリ植物というのですが、Wikipediaによると、アリがその植物の出す蜜を食べ、植物体の中にすみかを得る代わりに、葉を食べる草食性の昆虫や動物を撃退したり、アリの排出物を植物への栄養分として与えるという共生関係をいうようです。

ところが、このCamponotus schmitziというアリは、一方では蜜を食べ、つるに穴を開けてすみかとしていながら、ウツボカズラの消化液の中を平気で泳いて、中にはまった虫を横取りしているというのです。アリにとっては一方的に調子が良くて、植物にとって損なのですが、なぜかアリを住まわせているウツボカズラは葉も捕虫器も大きくなり、また、捕虫器が長持ちするそうです。

最近の論文の要旨をいくつかざっと読んでみました。

1. V. Bonhomme et al., J. Tropical Ecology 27, 15 (2011).
2. V. Bazile et al., PLOS one 7, e36179 (2012).
3. M. Scharmann et al., PLOS one 8, e63556 (2013).

最初の論文では主に観察の結果を書いています。通常、アリは攻撃的なので、アリがいると他の虫達はあまり近づかないのですが、このウツボカズラではなぜかたくさんの虫がやってきていました。それはアリが捕虫器の中で待ち伏せしていて、姿を隠しているからのようです。それではアリは何を植物に与えているのかというと、この消化液はpH~5程度で酸性度はあまり高くありません。それで消化力も弱いのですが、アリはそこにはまったエサになる昆虫を食べる代わりにそれを細かくして戻してやり、消化しやすくしているというのです。

次も同じグループの論文ですが、植物がアリから栄養を受けているかどうか確かめようというものです。アリが住んでいるウツボカズラとそうでないウツボカズラの生育状態を調べて、その結果から生育に必要な窒素をアリから得ているのだという結論に達しました。見積もると、植物体に必要な窒素の40%あまりをアリから得ているということです。アリは草食性の昆虫を撃退し、捕虫器の入れ物を滑りやすくしてあげ、さらに、アリの排出物から窒素を与えて共生関係を維持しているようです。

最後の論文は要約が日本語でも出ていました。この論文は2番めの論文で窒素をアリが供給しているというのを実際に確かめたという内容です。窒素の中には質量数が14と15という2つの同位体がありますが、その存在比(15N/14N)は自然界でほとんど一定です。調べてみると、このアリの中での存在比はやや高めに出ていました。そこで、アリを共生させているウツボカズラとそうでないものでその存在比を比較してみました。確かに、共生させているものの葉では15Nが多くなっています。さらに、アリに15Nの多いエサを与えて結果を比べてみました。やはり葉の15Nが増えています。これで、アリからウツボカズラに栄養分が渡っていることが明らかになりました。共生関係におけるアリの役割ははっきりしませんが、排出物から栄養分を与えている他、捕虫器の表面を綺麗にし、さらに、捕虫器の内部で生息するボウフラを退治することで栄養が他に逃げるのを防いでいるという内容です。

最後の論文には補足説明用のビデオがついていて、アリが捕虫器の中を泳いて虫を捕獲している様子が分かります(上の論文をクリックし、Supporting Informationのところにビデオファイルが2つありますので、再生してみてください)。

ところで、咲くやこの花館で見た虫は何だったのでしょう。角のような突起の先端を拡大してみます。

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小さなアリのようなものが見えます。もっと拡大してみます。

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確かにアリです。突起の先端に集まって蜜をなめているようです。このアリは体長1mmちょっとで、上に出てきたC. schmitziの働き蟻の4-5mmに比べるとずっと小さいので別の種です。アリは腹と胸の間にある腹柄の節数で大きく分かれます。この種は写真からは腹柄節が1つなので、ヤマアリ亜科などが属するグループに入り、さらに検索表を見ていくと、あまり確かではないのですが、ヒメキアリ属に属するのではないかなという気がします。この仲間にウスヒメキアリという南方系のアリがいるのですが、それと似ているような感じです。ひょっとしてこのアリ、ウツボカズラと共生しているのではないでしょうか。今度行った時に巣を探してみようと思います。

先日、大阪府鶴見区の咲くやこの花館でシダ調べをするついでに、大池の方へもちょっと行ってみました。そこで見た鳥達です。とりあえず普通種ばかりでしたが・・・。

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まず最初に出会ったのはジョウビタキでした。近くの柵の上に止まってしきりにこちらを気にしています。やがて飛んでいってしまいました。

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次に出会ったのはハクセキレイでした。大池の池畔を歩いていました。こちらは人を全く恐れないようで、どんどんと近づいてきます。

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池は相変わらず、カモがいっぱいです。でも、例によってエサをやっているので岸はカモでごった返しています。ちょっと離れたところをバンが通り過ぎました。

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オオバンもいます。

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ユリカモメは岸から離れたところで何羽か浮かんでいました。

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カイツブリはいつ見ても可愛いですね。

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こんな格好をして・・・。

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ヒドリガモが盛んに鳴いています。つい写してしまいますね。

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何となくユーモラスですね。

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池から離れ、歩いているとハシボソガラスがいました。

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と、突然カラスも鳴き出しました。皆、よく鳴く日です。

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後は林の中で見たヒヨドリとシロハラでした。鳥はそこそこいるのですが、いつもの常連たちばかりですね。

もう家の周辺でのシダ調べはほとんど尽きたような気がしていたのですが、20年前シダを観察していた頃の観察ノートが出てきました。それを見ると、歩いた場所の地図が書いてあって、見つけたシダの場所も記入され、実に細かく記録されていました。箕面にも何度も出かけ、多い時には1回で52種も見つけています。昔は熱心だったんだとあらためて思いました。

家の周辺でもいろいろな沢や山道を歩いた記録が載っていました。ちょっと遠かったのですが、山道を久しぶりに歩いてみました。昔は藪こぎをしていた場所には細い道ができていて大変歩きやすくなっていました。ただ、この山道への入り口がなかなか見つからなくて、あちらこちらうろうろしました。

山道の入り口に古い神社があるのですが、その辺りからシダがいっぱい。夢中で撮影しました。

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まずはハカタシダです。図鑑に斑入りの写真が出ていたのでよく覚えていたのですが、ここはほとんど斑入りばかりです。実に綺麗です。

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ちょっと拡大してみました。

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ソーラスはやや縁よりではあるのですが、ほぼ中間です。ハカタシダで間違いないでしょう。

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次はちょっと自信がないのですが、イノデモドキかなと思っている種です。「写真でわかるシダ図鑑」によると、イノデ8種の見分け方は「田の字」でできると書いてあります。田の字というは、葉のツヤがあるかないか、葉軸下部の鱗片の幅が広いか狭いかで分けると、4群に分けられるという意味です。それが「田」の字の一つ一つの四角の枠に入ります。上の写真では葉にツヤがありそうです。

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葉軸下部の鱗片も太そうです。よって、「田」の字の4つの四角のうち、左上の群になります。この群にはイノデ、イノデモドキ、オニイノデが入っています。オニイノデの小羽片の基部は軸に流れるとのことなので、葉を拡大してみます。

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特に流れている様子はないので、イノデかイノデモドキということになります。次はソーラスを見ることになります。

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ソーラスは中間よりやや縁よりです。さらに、葉全体の形が肩がなく素直に細くなっています。ソーラスは小羽片の耳側からついています。こんなところからイノデモドキかなと思いました。ちょっと自信がないので、今度もう一度見直してみます。

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次はこの間も見たハシゴシダです。よく似た種でコハシゴシダがあるので、ハシゴシダがあると毎回調べています。この2種の違いは本によってまちまちです。「野草検索図鑑」では、コハシゴシダは最初の上向きの裂片が独立するという点が書いてあります。「写真でわかるシダ図鑑」では、各裂片が丸っこくて、互いに離れる傾向があるとされています。

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いずれにしても、これはハシゴシダのようです。

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次はジュウモンジシダです。これだけは悩まずに名前が言えるのでよいですね。

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十文字の「十」の部分の拡大です。

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そして、ソーラス。中間やや中肋よりという感じでしょうか。見分けやすいのですが、よく見ると羽片も変わった形をしていますね。

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最後はこのシダです。実は以前にも見たのですが、名前が分からず、そのままにしていました。この日はばっちり分かりました。

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葉を拡大してみました。図鑑と見比べると、ホソバイヌワラビのようですが、図鑑を見ると小羽片の中肋に棘があるというのが書いてありました。現地でいつもこの確認を忘れてしまっています。この日も見るのを忘れていたのですが、写真をよくみると、棘が写っているところがありました。

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右下の小羽片ですが、確かに棘があります。これで間違いないでしょう。

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そしてこれがソーラスです。図鑑によるとソーラスは鈎型、三日月型と書かれているので、拡大してみました。

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確かにそんな風に見えるところもあります。

この日はちょっと気合を入れて探したので、いろいろと見つけることが出来ました。でも、20年前のレベルにはまだまだ程遠いみたいです。

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